年金資産運用

経済レポート

2022年の米利上げは最大1回か

米FRB(連邦準備制度理事会)は11月2日~3日のFOMC(公開市場委員会)で、テーパリング(量的緩和の縮小)開始を決定した。月間1,200億ドルの買い入れ額を毎月150億ドルずつ減らし、8ヶ月かけて買い入れ額をゼロにする計画だ。 市場ではテーパリング開始を完全に織り込み済みで、むしろ「利上げ」に関心が移っていた。この意味でテーパリングのペースが注目された。仮に事前の市場コンセンサス(8ヶ月)よりも短期間なら、「FRBは利上げを急ぎたいのでは」との観測も成り立...

経済レポート

エンダウメントの運用モデルは成功したのか

公私の年金基金と並ぶ米国の長期投資家の一つに大学のエンダウメント(寄贈基金)がある。米国の大学財政において研究や教育あるいは運営費用の支出を賄う上で、授業料や寄付金と並ぶ第3の収入の柱がエンダウメントからの投資収益である。エンダウメントの原資は寄付金を含む毎年の収支の差額である。現在最大のエンダウメントはハーバード大学(2020年6月末の運用資産額406億ドル)であり、テキサス大学システム(同320億ドル)、エール大学(同312億ドル)と続く。これらの大学では支出の...

経済レポート

アセットオーナーとESG投資~GPIFのESG活動報告を読む~

■要旨 日本の年金運用において自家運用は限定的であり、ほとんどがアセットマネジャーに対する委託運用の形態で行われている。そのため、エンゲージメントの一部を除いて、アセットオーナーがESG投資に直接コミットする必要はないかのようにも見える。しかし、株式の運用のみならず、運用資産全体でESG要素を意識し、一気通貫したESG投資の体制を構築するには、アセットオーナーが投資方針等の形でESGを含めた哲学を示すことが重要である。そのためには、ESG指数を意識した運用の採...

経済レポート

参加者不在の市場は機能しない

官庁や取引所が主導して新しい市場を創設し金融商品を導入する際に、海外の類例を参考にすることがある。ところが、これまでの例では、市場が作られたものの、ご祝儀取引が途絶えてしまうと取引量が枯渇し、機能しなくなった市場が幾つか見られる。 資本主義経済において、市場は重要な役割を果たす存在である。行き過ぎを抑えるために介入を求められることもあるが、“神の見えざる手”が機能するのは、需要と供給とが出会うことで市場価格が形成されるためである。ところ...

経済レポート

ESG開示と評価の新潮流

ESG投資に対する関心が高まっている。2006年に国連で設置された責任投資原則(PRI)では、投資分析や意思決定プロセス、所有方針にESG課題を組み込み、投資主体に対してESG課題についての開示や課題解決に向けた協働を働きかけることを求めるなど、金融市場においてもESG課題への取り組みが求められるようになった。2006年に署名した年金基金や機関投資家は63社(運用資産6.5兆ドル)であったが、2020年には3,613社(同103.4兆ドル)にまで拡大している。さらに...

経済レポート

注目が高まる日本へのプライベートエクイティ投資

日本国内の企業へのプライベートエクイティ(PE)ファンドによる投資が活発化している。2020年には国内でPEファンドによって92件の投資が行われた(図表1)。単年毎に見ると、少数の大規模案件の有無によって取引総額は大きく変化しているものの、取引件数は増加が続いている。近年では、日本のPE市場への注目が高まっており、海外のPEファンドによる日本企業への投資が増加している。2021年に入ってからは、スウェーデンの投資ファンドEQTや香港の投資ファンドPAGが日本での投資...

経済レポート

エンダウメント・モデルのこれから

去る5月、長らくエール大学基金(エンダウメント)を率いてきた、デビット・スウェンセン氏の逝去が報じられた。1985年に彼が最高投資責任者(CIO)に就任した際、13億ドルだった同基金の運用資産は現在300億ドルを超えており、その最大の要因の1つに年平均10%近い運用収益率があるのは間違いない。 高いパフォーマンスは、他のエンダウメントにも影響を与えた。債券や上場株式などの伝統的資産に加え、代替資産(オルタナティブ)にも大胆に分散投資する、彼の投資手法を取り入れ...

経済レポート

ESG投資の意義~何のためにESGを意識するのか~

近年の日本におけるESG投資の流れは、公的年金の積極的な取組みに加え、金融庁や東京証券取引所が二つのコードを提唱したことで、急速に拡大している。決して、流れに逆らう必要はないが、個々の運用者は、何時どのように、取組むかを考える必要がある。 まず、ESG投資が、すべての企業や団体にとって同じように求められるものか考えておきたい。アセットオーナーの資金特性により、ESG投資への積極性に差が生じることもあるだろう。また、ESGの中で3要素のどれに力点を置くかで、異な...

経済レポート

ESGへの取組みは不可避である

近年の年金運用において、ESG投資を意識することは、もはや避けて通ることは不可能であろう。古くから株式投資の世界では、ESG要素は超過収益の源泉の一つとして意識されて来たものであり、必ずしも財務諸表に反映のされない要素として研究が行われて来た。しかし、昨今のESGへの取組みは、単なる超過収益の源泉となる可能性といった議論を飛び越えて、年金に限らず資産運用者がすべからく取組むべきものとして意識されるようになっている。 日本においてESG投資を強く推進する動きの契...

経済レポート

株式市場での格差が目立つ

京都大学経営管理大学院では東京証券取引所と共同で長期投資のための新たな株価指数を研究開発している1。その過程で少し不思議な現象に出くわした。時価総額の大きな企業の数が減っているとの事実である。ここでの「時価総額の大きな企業」とは、「市場全体の時価総額との対比で一定の率以上ある企業」との定義である。市場全体の時価総額は新型コロナの影響によって減少したものの、それは一時的であり、増大傾向を維持している。この市場の堅調さに反して、投資家として高く評価できる個別企業が限定的...