欧米保険事情

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欧州大手保険グループの2022年上期末SCR比率の状況について(3)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(資本取引等)-

■要旨 本年1月12日、米国最大生保であるメットライフが、米国内の個人向け生命保険・年金事業欧州大手保険グループの2022年上半期決算発表に伴い、ソルベンシーII制度に基づく各種数値等が開示されている。 このテーマに関する前々回のレポートでは、欧州大手保険グループのSCR比率の水準等について、全体的な状況を報告し、前回のレポートでは、各社のSCR比率の推移分析や感応度の推移について報告した。今回のレポートでは、ソルベンシー比率に影響を与える資本管理に関係...

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欧州大手保険グループの2022年上期末SCR比率の状況について(2)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(比率の推移分析と感応度の推移)-

■要旨 欧州大手保険グループの2022年上半期決算発表に伴い、ソルベンシーII制度に基づく各種数値等が開示されている。 前回のレポートでは、欧州大手保険グループのSCR比率の水準等について、全体的な状況を報告したが、今回のレポートでは、各社のSCR比率の推移分析や感応度の推移の状況について報告する。 ■目次 1―はじめに 2―各社のSCR比率や感応度の推移   1|AXA   2|Allianz   3|Generali   4|A...

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EU内で統一された、保険会社の再建と破綻処理の検討の方向性-予防計画から破綻処理のバリエーション等まで、EIOPAが今後の方針に関する文書を公表

■要旨 EIOPAが「保険会社の再建と破綻処理指令に関する提案の概要」と題する検討文書を公表した。まずは予防的な計画を、あらかじめ多くの保険会社に求めることから始められ、保険事業特有の事情を考慮しながら破綻処理方法のバリエーションを増やすこと、また各国当局間の調整や協力にも焦点をあてていくこと、などが重要とされている。今後、具体的な規定の整備や、それがうまく機能するかチェックする仕組みの構築など、技術的な問題の検討を、EIOPAが進める予定とされている。 ...

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欧州大手保険グループの2022年上期末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(全体的な状況) -

■要旨 欧州大手保険グループの2022年上半期決算の発表が8月に行われており、それに伴い、ソルベンシーII制度に基づく各種数値等も開示されている。 まずは、今回のレポートでは、欧州大手保険グループの2022年上期末のSCR比率の水準等について、全体的な状況を報告する。 ■目次 1―はじめに 2―欧州大手保険グループのSCR比率の推移 3―SCR比率算定等に関係する事項   1|SCR比率の目標範囲   2|SCR等の算出方法(内部モデ...

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ドイツの生命保険監督を巡る動向(2)-BaFinの2021年Annual Reportより(生命保険会社の監督及び業績等の状況)-

■要旨 前回のレポートでは、ドイツの保険監督官庁であるBaFin(Bundesanstalt für Finanzdienstleistungsaufsicht:連邦金融監督庁)の2021年のAnnual Reportの「スポットライト(Spotlights)」の章に記載されている項目の中から、主として生命保険の監督に関するトピック及びそれらのトピックに関連する最近の状況について報告した。 今回のレポートでは、Annual Reportの「II...

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ドイツの生命保険監督を巡る動向(1)-BaFinの2021年Annual Reportよりスポットライトからの抜粋と関連情報-

■要旨

ドイツの生命保険会社の状況や業界が抱える課題及びこれらの課題に対するBaFinの考え方等についてはこれまでもいくつかのレポートで報告してきた。

昨年度は、BaFinの2020年のAnnual Report等に基づいて、ドイツの生命保険業界の監督に関するCOVID-19、Brexit、デジタル化、サステナブルファイナンス、低金利環境、ソルベンシーIIレビューといったトピック等及びソルベンシーIIがスタートしての5年間を踏まえての、ソルベンシーIIを巡るドイツの現状等について、
2回のレポートで報告した。

今回はBaFinの2021年のAnnual Report等に基づいて、ドイツの生命保険業界の監督に関する低金利環境、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、サステナブルファイナンス、低金利環境、デジタル化、消費者保護といったトピック及びそれらのトピックに関連する最近の状況、さらにはドイツの生命保険会社の監督及び業績等の状況について報告する。

まずは、今回は、2021年のAnnual Reportの「Ⅰ.スポットライト(Spotlights)」の章に記載されている項目の中から、主として生命保険の監督に関するトピックの内容及びそれらのトピックに関連する最近の状況についても報告する。

■目次

1―はじめに
2―2021年のスポットライト
  1|低金利
  2|新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック
  3|サステナブルファイナンス
  4|デジタル化(Digitalisation)
3―BaFinの2021年の監督上の優先事項
4―まとめドイツの生命保険会社の状況や業界が抱える課題及びこれらの課題に対するBaFinの考え方等についてはこれまでもいくつかのレポートで報告してきた。

昨年度は、BaFinの2020年のAnnual Report等に基づいて、ドイツの生命保険業界の監督に関するCOVID-19、Brexit、デジタル化、サステナブルファイナンス、低金利環境、ソルベンシーIIレビューといったトピック等及びソルベンシーIIがスタートしての5年間を踏まえての、ソルベンシーIIを巡るドイツの現状等について、2回のレポートで報告した。

今回はBaFinの2021年のAnnual Report1等に基づいて、ドイツの生命保険業界の監督に関する低金利環境、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、サステナブルファイナンス、低金利環境、デジタル化、消費者保護といったトピック及びそれらのトピックに関連する最近の状況、さらにはドイツの生命保険会社の監督及び業績等の状況について報告する。

まずは、今回は、2021年のAnnual Reportの「Ⅰ.スポットライト(Spotlights)」の章に記載されている項目の中から、主として生命保険の監督に関するトピックの内容及びそれらのトピックに関連する最近の状況についても報告する。

2―2021年のスポットライト

BaFinが2021年のAnnual Reportの「Ⅰ.スポットライト(Spotlights)」の章に掲げている項目のうち、「2-1.低金利」、「2-2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック」、「4.サステナブルファイナンス」、「6.デジタル化(Digitalisation)」、「7.消費者保護」、の5つの項目について、主として生命保険に関係する内容を中心に、Annual Report から抜粋して報告する。併せて、これらのトピックに関連する最近の状況のいくつかを(参考)として報告する。なお、ここで掲げた全ての項目は、保険会社だけでなく、銀行や証券会社等を含めた金融機関全体の問題である。1|低金利
BaFinの見解では、低金利が続くことは、金融セクターが直面する最大の金融リスクの一つとなる。2021年には、多くの伝統的な金融市場のビジネスモデルに大きな悪影響を与え続けた。一部の機関や会社にとって、現在進行中の低金利環境は重大な悪影響を及ぼし、長期的にはその存在を危険にさらす可能性さえある。加えて、市場の熱狂を助長し、クラスターリスク(集団集中リスク)を形成する可能性がある。

生命保険会社は、超低金利時代においても、過去に発行された契約に対する比較的高い保証を果たさなければならないことから、継続する低金利環境から、かなりのプレッシャーを受けている。生命保険業界は2021年に入ってもおおむね堅調で、ここしばらくは低金利保証の革新的な商品を提供している。それでも、目に見える形での救済(の必要性)の兆しが徐々に現れてきている。2021年末時点で、15の生命保険会社がBaFinによる監督強化の対象となっている。

2021年末時点で、強化された監督体制下でのペンションカッセン(Pensionskassen)2の数は約40であった。2020年12月末時点では、36のペンションカッセンが厳重な監督下にあったことから、その数が増加した。低金利は、終身年金しか提供していないペンションカッセンに特に強い影響を与えてきている。金利が現在の水準のままであれば、受益者が例えばスポンサーとしての雇用主からの外部支援を受けた場合にのみ、受益者との約束を果たすことができるペンションカッセンが増える、と想定されている。なお、BaFinはこれまで規制を受けるペンションカッセンが0.25%を超える保証金利を無期限に承認しないことを明確にしてきた。
 
2 ドイツの年金市場は、2つの主要な職業年金制度であるペンションカッセン(Pensionskassen)と年金基金(Pensionfonds)を中心に構成されており、それぞれが2つの異なる職業年金制度を提供している。いずれも、IORP(職域年金基金)指令の適用範囲に含まれる。それぞれの健全性制度は異なり、Pensionskassenはより厳しい健全性規制の対象となる。VAG(ドイツ保険監督法)のセクション232 に従って、Pensionskassen は、収入の損失をカバーする生命保険会社であり、生命保険会社に適用される VAG の規定の対象となるが、Pensionskassen に固有の調整が行われる。一方で、Pensionsfonds は、積立型年金制度の形で職業退職金を提供する法人格のある年金制度であり、Pensionskassen とは異なり、保険契約が提供するのと同様な、全ての受給権、給付の水準又は特定の水準の給付を提供するために必要な、将来の拠出の水準を保証することは許可されていない。ただし、ともに保険会社に対するソルベンシーII指令は適用されない。
(参考1)生命保険契約の保証水準(昨年の2020Annual Reportより)
BaFinは2020年に、新契約に金利リスクがどの程度含まれているかを調査し、2020年のAnnual Reportで報告した。その内容を再掲すると、以下の通りとなっていた。

・長期貯蓄商品は、保険期間中に支払われる保険料ベースで、新契約の75.7%を占める。
この長期貯蓄商品のうち、年金保険の割合が90.9%、その中で12.6%はユニットリンク型年金保険、40.4%は従来型とユニットリンク型のハイブリッド型年金保険だった。

・2024年までに、年金保険新契約におけるハイブリッド型商品のシェアはほぼ50%まで拡大すると予想されていた。

・全ての生命保険会社の全ての保証付貯蓄商品の保証利率の中央値は、据置期間中が0.68%、支払段階では0.77%だった。(参考2)保険会社の投資(デリバティブの使用)に関する調査結果
BaFinは5月3日に「デリバティブは解決策ですか?」とのタイトル3で、保険会社の投資に関する調査結果4を更新している。これによると、低金利の時代に、保険会社はますますデリバティブに手を伸ばしてきており、ヘッジ目的だけでなく、利回りを高めることも目的で利用されている。これに対して、BaFinはリスクを管理する必要がある、と述べている。

保険会社は、例えばリスクを軽減するために、限られた範囲5で、デリバティブ金融商品を使用することが認められている。それにもかかわらず、業界でのデリバティブの使用は着実に増加している。殆どの保険会社は、外国為替リスクのケースのように、ヘッジ目的でデリバティブを使用しているが、利回り向上を目的としてデリバティブを利用する保険会社もある。

過去数年間、デリバティブ取引の想定元本は着実に増加しており、保険会社の大半は、ヘッジ目的でそれらを使用している。例えば、過去には主に債券ポートフォリオの金利をヘッジするために使用されていたが、現在ではデュレーション管理の目的で使用されることが多くなっている。

保険会社は現在、主に先物為替取引の形で、為替レートのヘッジにデリバティブを使用している。これは、(1)投資資本の一層の国際的多様化、(2)ユーロ圏での低金利環境の継続、による。

保険会社は外貨で発行された債券に、より多くの投資を行ってきており、特に米ドル、英ポンド、デンマーククローネで発行された債券に注目してきている。これにより、保険会社は、ヘッジコストを考慮しても、ユーロで発行された証券と比較して、為替レートによる金利差の恩恵を受けることができる形になっている。保険会社がこのプロセスで引き受ける外国為替リスクは、主にデリバティブによって転嫁されている。

低金利の時代に、保険会社は利回りを上げるためにデリバティブ商品をより頻繁に使用するようになってきている。これを行っている保険会社が、デリバティブ戦略を実施するために設計されたターゲットファンド自体を含むマスターファンドなどのファンド構造を利用している、ことは特に注目に値する。これには、獲得したオプションプレミアムによって、より高い利回りを可能にすることを目的とした戦略も含まれる。BaFinはこの動向を注意深くフォローしており、保険会社がプルーデントパーソン原則とリスク負担能力に応じて、追加のリスクに批判的に対処することを要求している。

BaFinは、デリバティブの利用を増やしている保険会社が、関連するリスクを批判的かつ包括的に検討することを期待している。そのためには、適切なリスク管理システムを導入する必要があり、BaFinは、会社がデリバティブ金融商品の使用について透明かつ包括的に報告することを期待している、としている。
 
3https://www.bafin.de/SharedDocs/Veroeffentlichungen/EN/Fachartikel/2022/fa_bj_2202_Derivate_en.html
4 持続的な低金利環境により、保険会社が妥当な利回りを生み出すことが難しくなってきており、利回りを求める中で、保険会社はより有利でリスクの高い投資を行うように駆り立てられているのではないか、あまりにも多くのリスクを負っているのではないか、との問題意識から、BaFinは 2020 年第 4 四半期に、保険会社の投資行動とデリバティブの使用に関する調査を行った。
5 デリバティブ金融商品の使用は、VAG(ドイツ保険監督法)第5条セクション 124 (1) 第2センテンスNo5に規定されており、デリバティブ金融商品がリスクの軽減又は効率的なポートフォリオ管理の促進に役立つ場合にのみ、保険会社はデリバティブ金融商品の使用を許可される。純粋な取引ポジションを構築することのみを目的とする場合 (裁定取引)、又は対応する証券が実際に保有されていない場合 (空売り) の取引は許可されない。
(参考3)保険会社の投資(安定投資)
BaFinのWebサイトにおける専門家による記事6によれば、以下のことが述べられている。

市場金利が最近上昇したとしても、低金利環境が依然として市場をしっかりと支配している中にあって、保険会社は、インフラ(ストラクチャ)プロジェクトなど、従来の投資範囲外の資産に資金を投資して収益を上げようとする傾向が強まっている。具体的には、風力発電所や太陽光発電所などの再生可能エネルギープロジェクトや、道路建設、ガスネットワーク、送電網プロジェクト等が挙げられる。

このような投資は、長期で比較的高い利回り等、保険会社にとって有利な特徴を提供している。ただし、投資は非常に複雑であることが多く、リスク管理に特別な課題をもたらす。

ドイツの保険会社の投資のうち、インフラプロジェクトへの投資の割合は、2010年にはわずか 0.7%だったが、2019 年には2%に上昇した。2020 年末に実施されたBaFinの利回り追求(Search for Yield)調査では、保険会社は2021年にさらに約3%まで増加させることを計画していたことが明らかになっていた。この調査では、保険会社の様々な利回り追求戦略が調査された。調査結果は、インフラストラクチャーへの投資が資産クラスとしての地位を確立したという明確な傾向を示していた。 |新型コロナウイルス感染症(COVID-19) パンデミック
COVID-19のパンデミック発生直後の2020年3月、BaFinは既存の規制枠組みが提供する柔軟性を利用して、多くの要件を一時的にパンデミックによって引き起こされた状況に適応させることを決定した。BaFinは、このテーマに関する一連のよくある質問 (FAQ) をウェブサイト7で公開し、随時更新している。主な目的は、被監督会社がマクロ経済機能を果たし続けることができるよう、パンデミックの影響を緩和し、会社の負担を軽減することであり、例えば、銀行や貯蓄銀行が自己資本と政府資金の両方を実体経済の企業に迅速に支出することを支援することだった。なお、監督対象の会社が満たすべき要件は、既存のルールと財務の安定性が許す範囲で緩和されただけだった。

このうち、保険会社への影響は、以下の通りであった。

新型コロナウイルスのパンデミックは、保険業界のビジネスに殆ど影響を与えなかった。その結果、2021年にBaFinは、2020年にパンデミックへの対応として採用された措置の殆どを当面終了することを認めた。パンデミックにより依然として必要とされている接触制限に関連する特定の運営上の救済措置のみが有効となった。BaFinは引き続き、流動性リスクと市場リスクの状況を詳細にモニタリングしている。

欧州システミックリスク委員会(ESRB)によるパンデミック中の分配制限に関する勧告-これにより、保険会社は自社株買いを自粛し、慎重に検討し、個別の状況を分析した上でのみ、配当、利益、賞与を分配することが推奨されていた-も、2021年に終了が認められた。しかし、監督当局は、保険会社が慎重な対応を取ることを引き続き期待している。BaFinは、新型コロナウイルスの感染拡大以降に行われた配当金の分配状況を分析し、時には監督当局の介入によって現金流出が減らされたり延期されたりして、困難な状況下でも、保険会社の経済的パフォーマンスとリスク負担能力が保証されていると判断した。 事業中断保険(BI)
パンデミックの影響で2020年と2021年に世間の注目を集めた保険契約の一つに、事業中断保険があった。その背景には、特に接客業において、多くの企業が公式に休業を命じられたことがある。これらの一部は事業中断保険に加入していた。市場で使用されている一般的な約款は多種多様であるため、それらが保障対象になっているのかどうかを包括的に述べることはできない。2021年末のこの報告書の編集期限までに、多くの第一審及び第二審の判決が出されているが、その殆どが保険会社に有利な判決であった。しかし、その日までに最高裁判所である連邦司法裁判所による個々の事案についての判決は下されていない。(参考4)COVID19の影響
ドイツの連邦統計局であるDestatisは、Covid-19の間に、「パンデミックの結果としての高い死亡率」を主な原因として、ドイツ人の平均寿命が低下したことを明らかにしている。2021 年の新生児の平均寿命は 男性が78.2 歳、女性が83.2 歳で、パンデミック前の 2019 年と比較して著しく低下(男子は0.6年減少、女子は0.4年減少)したと報告している。(参考5)事業中断保険(BI)を巡る最近のトピック
GDV(ドイツ保険協会)は、BIの補償は「常に物的損害を前提としているため、工場での火災により生産が停止した場合、結果として生じる損害は事業中断保険でカバーされる。しかし、国が命令し、計画的に原材料を配給することによる生産損失はない。」として、BIの免責規定により、国家命令によるガス配給による事業中断 (BI)は、標準的な商業保険では補償から除外される、ことを強調している。|サステナブルファイナンス
2019年12月に公表したBaFinのサステナビリティ(持続可能性)リスクへの対処に関するガイダンス通知8について、銀行・保険会社・投資会社はどのように運用しているか、というテーマに関して、BaFinは2021年4月に399の会社の調査を開始した。合計381の回答に基づくと、ほぼ全ての事業体がサステナビリティの問題を認識しており、さらに、単に気候や環境リスクに焦点を当てるだけでなく、社会的要因やガバナンスの側面も考慮していた。

BaFinの保険・年金基金監督部門のCEOであるFrank Grund博士は、2021年の11月中旬に行われた講演で、保険業界は既にサステナビリティリスクを特定し、評価し、管理する方法をますます持つようになってきているが、 「しかし、それはおそらく、それが彼らの固有のビジネスモデルであり、保険マネージャーがより良い人々だからということではない。」 と述べた。
 

BaFinサステナビリティ調査
2021年11月18日付のBaFinウェブサイトの専門家記事9は、BaFinが2021年春に開始した分野横断的なサステナブルファイナンス調査を取り上げた。調査の目的は、BaFinのサステナビリティリスクへの対処に関するガイダンス通知の実施がどの程度進んでいるかを知ることであった。参加したのは銀行、保険、証券の399社であった。詳細な状況報告はこちら10

調査では、合計260の保険会社と年金基金(うち82は職域年金機関に分類される)が、他の機関よりもはるかに広範囲で詳細な質問を受けた。BaFinの監督下にある保険会社や年金基金の約半数が参加したことから、この結果は代表的なものであった。2022年1月のBaFin Journalは、保険会社向けの結果を報告している。保険会社と年金基金の結果に関する詳細な報告書は、BaFinのウェブサイトで閲覧できる。 |デジタル化(Digitalisation
BaFinの中期目標に関するスピーチの中で、Mark Branson長官は、イノベーションが金融セクターの将来にとって不可欠であることを強調し、BaFinはこれをサポートすることを目指しており、新しい技術を理解して分析し、その洞察を監督業務に取り入れたいと考えている、と述べた。

さらにMark Branson長官は、BaFinが会社の運営の安定性と安全性を監視し続けていることを明らかにした。BaFinは、(1)監督対象の組織がサイバー攻撃や内部のセキュリティインシデントに対してどの程度の防御力を備えているか、(2)その技術プラットフォームはどの程度の回復力と信頼性を備えているか、という2つの主要な問題に焦点を当てている。Mark Branson長官は、「多額の損失を被っているITセキュリティリスクのギャップを修復しない機関は、自らの評判を危険にさらしており、最悪の場合、金融システムの安定性を損なう可能性がある。」、「これは非常に一般的なリスクであり、急速に増加している。」と述べた。彼はまた、BaFinが念頭に置かなければならないもう一つのトピックは、バリューチェーンの断片化が、特に、重要な活動やプロセスがアウトソーシングされている場合に、企業のリスクプロファイルを変化させている、と述べた。BaFinは現在、アウトソーシングサービスを提供する企業を直接検査する権限を持つようになった。

以下が、2021年におけるBaFinの取り組み内容であった。1.BaFinはMaRiskとBAITの新バージョンと新しいZAIT 通達を発行
(1) MaRiskの新バージョン
2021年8月16日に、BaFinは銀行のリスク管理に関する最低要件 (MaRisk) の改訂第6版を公表した。特に、不良債権及び債務不履行のエクスポジャー及びアウトソーシングの取り決めに関する欧州銀行監督局(EBA)のガイドラインを実施した。さらに、ICT (情報通信技術) とセキュリティリスク管理に関するEBAガイドラインからの個々の要件を含めた。MaRiskの新バージョンは、公開と同時に発効した。

(2) BAITの新バージョン
2021年8月16日に、BaFinは金融機関におけるITの監督要件(IT-BAIT)の新バージョンを公表し、同日に施行された。BAITはMaRiskをベースにしているが、改訂版では、BaFinが現在期待している安全な情報処理と情報技術に関する要件を定めている。BaFinはBAITにおいて根本的に新しい要件を策定したわけではなく、既存の要件をより詳細に定めている。BAIT改正の背景には、ICTとセキュリティリスク管理に関するEBAガイドラインがある。

(3) 新しいZAIT通達
2021年8月16日に、BaFinは新しい決済サービスプロバイダーにおける IT の監督要件に関する通達(IT- ZAIT)を発行した。この文書では、情報技術の利用やサイバーセキュリティに関して、支払機関や電子マネー機関が満たさなければならない業務の然るべき適切な遂行に関する監督上の要件について説明している。ZAITは既存の監督要件を解釈し、公表と同時に発効した。通達はMaRiskとBAITに密接に基づいている。具体的には、ICT及びセキュリティリスク管理に関するEBAガイドライン及びアウトソーシングの取り決めに関するガイドラインに定められた要件を含んでいる。

MaRiskとBAITの改訂版、及びZAITに関する追加情報は、2021年8月のBaFin Journal11に掲載されている。 2.保険分野のデジタルトランスフォーメーションに関するBaFinの調査
BaFinの保険監督部門は、2021年4月から6月にかけて、保険分野におけるDT(デジタルトランスフォーメーション)に関する調査を実施した。その目的は、デジタル変革のために展開されている資金の量と、このプロセスに利用可能なリソースの概要を把握し、このセクターの現在のITトレンドを特定することであった。

代表的なサンプルに基づいて、BaFinは28の保険会社と13の保険グループに、2つの主要な問題に焦点を当てて、このトピックに関する質問への回答を依頼した。寄せられた回答は、このセクターが以下のITトピックを特に重要であると考えていることを示唆していた。

・クラウドコンピューティング
・データドリブンプロジェクト
・自動化

ペンディング又は既に完了しているITプロジェクトの主な目標は次の通りであった。

・より高速な処理
・既存データの有効活用
・競争力の向上3.サイバー保険に関するBaFinの調査
さらに、保険監督部門は、ドイツ国内にある55の元受保険会社と再保険会社に加え、他のEU保険会社のドイツ国内の5つの支店に対して、サイバー保険セグメントに関する調査を行った。BaFinは調査結果について、既に2021年9月のBaFin Journal12及び2022年2月8日付のBaFinウェブサイトの専門記事13において報告している。

サイバー保険の分野は急速に成長しているが、ドイツでのビジネスはまだ比較的小規模であり、2020年に約2億4000万ユーロの総収入保険料があった。2020年の総損失率は42.1%で比較的緩やかであったが、個々の保険会社で記録される比率の幅は広かった。

価格設定上の問題として、損失履歴の欠如が明らかになった。 さらに、保険会社は要求されたレベルの粒度で要求されたデータを常に提供できるとは限らないことが明らかになった。 4.BaFinとドイツ連邦銀行の共同諮問文書に対するコメントプロセス
BaFinのMark Branson長官は、2021年11月のBaFinの中期目標に関する講演で、 「人工知能に基づくプロセスも慎重に検討する」 と発表し、「BaFinは、消費者がそのような革新から利益を得ることができ、技術主導のリスクに不当にさらされないように、非常に慎重になるだろう。」と述べた。

例えば、実際には役割を果たすべきではない特定の機能が信用の質に悪影響を及ぼすことをアルゴリズムが間接的に学習したために、顧客や顧客グループが差別されるのを防ぐにはどうすればよいかという問題がある。また、もう1つの重要な課題として、アルゴリズムを顧客、金融機関、監督者に説明可能で理解しやすいものにする方法がある。これが発生する多くの分野の1つは、銀行や保険会社の内部モデルの場合である。

BaFinとドイツ連邦銀行はこの分野のガイダンスを会社に提供することを目的としており、そのため2021年夏に 「リスクモデルにおける機械学習-特性と監督上の優先事項」 と題する諮問文書を起草し、コメントを求めた。文書に示された議論に対する反応は肯定的であった。詳細については、BaFinウェブサイトの専門記事「リスクモデルにおける機械学習」14で参照できる。 (参考6)BaFinの「デジタル化」に関するこれまでの取組
「デジタル化」 については、2018年以降のBaFinのAnnual Reportにおいて、重要なテーマとなってきた。

2020年のAnnual Reportにおいて、BaFinは、「アルゴリズムによる意思決定プロセスへの対処」というテーマで、BaFinが、ごくわずかな例外を除いて、アルゴリズムによる意思決定プロセスを認めていないことを明らかにした。アルゴリズムの重要な要素は、監視されたエンティティが実際にそれらを意思決定プロセスにどのように組み込むかということであるため、BaFinはアルゴリズムだけでなく、データから結果までの全体的な意思決定プロセスとそれに伴うリスクに焦点を当てた。原則として、BaFinは、継続的な監督活動の過程に関与する技術とは独立して、かかるプロセスを審査するとした。

BaFinは、2020年に 「内部リスクモデルにおける機械学習」 に関するワーキンググループを立ち上げ、銀行や保険会社の内部モデルにおける機械学習の利用を検討してきた。ワーキンググループは具体的な適用事例を検討し、ニューラルネットワークのような機械学習手法を再現し、実験室条件下で研究してきた。BaFinはまた、必要に応じての規則の変更の必要性を早期に特定できるように、情報を交換し、セクターや他の監督機関と協議することによって、機械学習プロセスの開発を綿密にフォローしてきた。|消費者保護-保険販売に係る報酬
2021年、BaFinは、ドイツ保険監督法に規定されている販売活動の報酬に関する要件に保険会社がどのように取り組んでいるのかについての詳細な調査を継続した。2021年の焦点は、保険流通指令 (IDD) 15によって生み出された法的状況にあった。業務遂行の監督に関連して、IDDは、保険を販売する際に、保険契約者 (IDDの文言では 「顧客」 と呼ばれる) の最善の利益のために行動する義務を保険事業者側に求めている。

2021年、BaFinは生命保険(より具体的には養老保険)に対する監督基準を含む通達の開発を開始し、2022年後半に公開する予定である。BaFinの業務は、IDDに基づいた保険販売の報酬と利益相反の防止に関する要件、及び商品の監視とガバナンス(POG)の要件に基づいていた。POGの手続きは2021年における欧州保険年金監督局(EIOPA)の優先事項でもあり、2021年11月末にEIOPAがウェブサイト上で公表した監督声明の対象となった。BaFinはこの作業に関与しており、この声明を業務遂行の監督強化策として歓迎する、と述べている。

3―BaFinの2021年の監督上の優先事項

BaFinは2021年に向けて監督上の優先事項を計画する際、COVID-19のパンデミックが金融市場に不確実性をもたらし続けると想定していた。これに沿って監督プログラムを設計し、その実行に成功した、としている。

全体的な監督上の優先事項は以下の通りであった。

・パンデミックの影響への対応
・依然として高い監視対象企業のIT・サイバーリスク
・集団消費者保護分野における課題

これらと以下に述べる優先事項に関する情報は、これらのスポットライトと今回のAnnual Reportの他の章に記載されている。

なお、監督上の優先事項は2021年を最後に公表されておらず、2022年に初めて発表されたthe Risks in BaFin's Focusに取って代わられている。
 

保険監督
2021年、BaFinは主に保険会社による投資に焦点を当て、保険会社が融資基準を緩和しておらず、保険会社のカバー状況に悪影響を及ぼす兆候はないことを確認した。生命保険会社の2021年の予測では、今後も保険金の安定的な支払いが可能であることが示唆された。対照的に、ペンションカッセンの状況は厳しい状態が続いた。

BaFinは、2021年にドイツ保険監督法第48 a条に対処するための監督措置を策定した。これらは販売報酬と利益相反を回避する方法を規定している。さらにBaFinは、2022年末までに公表予定の販売報酬に関する通達の作成に着手した。これを利用して、養老保険の販売に支払う報酬の具体的な要件を策定することを目指している。

また、保険監督部門は、欧州のサステナブルな財務開示要件の遵守状況を監視するための方針を策定した。これは特にグリーンウォッシングを防ぐためのものである。

さらに、保険監督部門は、2021年にサイバー保険を精査し、保険会社に調査を行った。その過程で、データの準備がまだ不十分な場合が多いことがわかった。適切でしっかりした価格を設定することも、もう一つの弱点である。この背景には、現在利用可能な履歴データが不十分であり、損失シナリオが絶えず変化していることがある。

4―まとめ

以上、今回は、BaFinが2021年のAnnual Reportの「Ⅰ.スポットライト(Spotlights)」の章に掲げている項目のうち、「2-1.低金利」、「2-2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック」、「4.サステナブルファイナンス」、「6.デジタル化(Digitalisation)」、「7.消費者保護」、の5つの項目について、主として生命保険の監督に関するトピック及びそれらのトピックに関連する最近の状況について報告してきた。

Annual Reportについては、過去の結果報告が中心になっている部分が多いが、ドイツの生命保険業界が抱えている各種の重要課題に対する、監督当局であるBaFinのスタンスや考え方、具体的な取組あるいは今後の方針等を窺い知るための有用な情報を提供している。

次回のレポートでは、Annual Reportの「III.監督行為」の章の「2.保険会社及び年金基金(Pensionsfonds)の監督」に基づいて、ドイツの生命保険会社の監督及び業績等の状況について報告する。 【関連レポート】 ドイツの生命保険監督を巡る動向(1)-BaFinの2020年Annual Reportより(スポットライト)-
ドイツの生命保険監督を巡る動向(2)-BaFinの2020年Annual Reportより(生命保険会社の監督及び業績等の状況)-
ドイツの生命保険監督を巡る動向(1)-BaFinの2019年Annual Reportより(スポットライト)-
ドイツの生命保険監督を巡る動向(2)-BaFinの2019年Annual Reportより(生命保険会社の監督及び業績等の状況)-
ドイツの責任準備金評価用最高予定利率が2022年から0.25%に-BMF(財務省)の決定内容と関係団体の反応-

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英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向(その4)-英国政府による協議文書と業界等の反応-

■要旨 英国は2020年2月1日にEUから離脱したが、2020年12月31日までは移行期間としてEU法が適用されてきた。これまでEU加盟国として、EUのソルベンシーII制度下にあった英国であるが、2021年からは、独自の新たな規制を構築していくことが可能になっている。 2021年9月の2回のレポートで、英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向について、英国がどのような問題意識を有して、どのようなプロセスで、ソルベンシーIIのレビューを進めようとし...

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IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(6)-49の全てのIAIGsが公開された-

■要旨 各国・地域の保険監督当局等によるIAIGs(国際的に活動する保険グループ)の措定を巡る状況については、2021年に、4つの保険年金フォーカス「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況-48グループのうちの45グループが明らかに-」(2021.4.1)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(2)-48グループのうちの47グループが明らかに-」(2021.4.7)及び「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(3)-49グループのうちの46グループが...

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カナダのOSFIがIFRS第17号(保険契約)の適用に伴う資本規制の最終改正内容を公表

■要旨 カナダの保険監督当局であるOSFI(Office of the Superintendent of Financial Institutions:金融機関監督庁)は、カナダの連邦制によって規制された金融機関と年金制度の健全性規制及び監督に対して責任を負うカナダ政府の独立機関だが、昨今の国際的な保険資本規制であるICS(保険資本基準)策定の動きや国際的な保険会計基準であるIFRS第17号(保険契約)の策定を受けて、カナダの資本規制の見直しを検討してきた。...

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IFRS第17号(保険契約)を巡る動向について-IASB、EFRAG、UKEBの動向等-

■要旨 保険契約のための新たな国際的な会計基準である「IFRS第17号(保険契約)」については、IASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)が、2017年5月18日に基準の最終案を公表し、その後2020年6月25日に修正基準を公表して、その基準内容が確定した状況になってから、2年が過ぎた。IFRS第17号は、2023年1月1日からの適用が想定されており、残り半年をきっている。 このテーマ...