法務

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EUのデジタル市場法の公布・施行-Contestabilityの確保

■要旨 2020年12月、欧州委員会は巨大デジタルプラットフォームに一律的に適用する規則であるDigital Market ActとDigital Services Actの原案を示し、以降、欧州理事会および欧州議会との間で交渉を行ってきた。その結果、2022年3月に双方の規則の施行が決定し、2022年秋公布、2023年施行予定となっている。本項はそのうちDigital Market Act(DMA)について解説を行うものである。   DMAはデ...

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SMBC日興事件、何が問題?-ブロックオファーと安定操作取引

■要旨 SMBC日興証券のブロックオファーにおける相場操縦事件が報道され、調査報告書が開示された。証券分野における金融商品取引法違反事件であることから、具体的に何が問題なのかを理解するのが容易ではない。   大株主が株を大量に売却するにあたっては、売却による市場価格の急激な下落を避けたいことから、金融商品取引所(証券取引所)での立会時間内に市場で株式を売却せずに済むような方法がとられている。   具体的には立会時間終了後に大株主から...

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Amazonの最恵国待遇条項訴訟-棄却決定に対するコロンビア特別区からの申立て

■要旨 2021年5月に米国コロンビア特別区(以下、特別区)はAmazonが第三者である小売業者(Third Party Seller、TPS)等との間に最恵国待遇条項を含む契約を締結し、Amazon以外のオンライン市場における商品販売価格をAmazonオンライン市場における価格以下にしないことを強制していることが反トラスト法違反として、特別区の裁判所に提訴を行った。   2022年3月に裁判所は、Amazonからの棄却申立てを受けて、口頭による...

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株主提案が10個までとは?-議案要領通知請求

今年の株主総会シーズンも一段落ついた。今回は株式会社における株主提案権について解説を行いたい。 取締役会を設置している株式会社の株主総会では、法定事項と定款記載事項についてのみ決議ができることとされている(会社法(以下、法)295条2項)。法律上、法令・定款と限定されているが、定款に記載できる事項には違法等でない限り原則として制限がなく、消費者運動や労働運動の目的達成のための提案や、個人株主による経営事項として取締役等に委任されているものにかかる提案も多くなさ...

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提案されたEUのデジタル市場法案-Digital Market Act

■目次 1――はじめに 2――DMAの立法目的・概要   1|DMAとは何か   2|DMAの立法趣旨   3|DMAの概要 3――DMAの規制対象   1|GKの定義   2|GK指定の手続き 4――GKの行為規制   1|DMA第5条の規制   2|DMA第6条の規制   3|DMA第5条第6条遵守に係る規律 5――欧州委員会の権限   1|市場調査権限   2|違反行為の調査権限 6――違反行為に対するペナルティ   1|...

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社外取締役の独立性とは-東芝の社外取締役選任に関連して

東芝の指名委員会を組織していた社外取締役(以下、A取締役)が、定時株主総会終結後に辞任をした。辞任の理由は、報道によると「物言う株主1」から推薦された社外取締役二名(以下、B,C取締役)の選任を会社提案とする指名委員会での決議に反対したことに関連しているとのことである。筆者としては株主総会におけるB,C取締役の選任は法に沿ったものだが、辞任をしたA取締役の行動は、一つの考え方として合理性があるものと考えている。 ところで、会社のガバナンスに関連して、「社外取締...

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業務提携に伴う1割出資の意義-三井住友FGとSBIホールディングスの事例を参考に

6月23日に三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)とSBIホールディングス(SBIHD)とが業務提携することと、SMFGがSBIHDに対して議決権株式の約1割を出資(正確には11.01%)することが公表された1。 本稿では、本件業務提携に限定せず、業務提携に伴って、議決権約1割の出資を行うということが、どのような意味合いを持つのか考えてみたい。なお、SMFGとSBIHDの事例に沿って、出資会社(株式を保有することとなる会社)も、出資先会社(株式を保有される...

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ランキングと独占禁止法-「食べログ」に関する東京地裁判決

2022年6月16日、有名グルメサイトである「食べログ」に、掲載飲食店に対して賠償を行うべきとの判決がでた。報道1によれば、「食べログ」が各店舗に付しているランキング(5点満点中何点か)についてアルゴリズム(計算手法)を変更した結果、原告である飲食チェーンが、チェーン店であることを理由としてランキングが下がったと主張し、損害賠償を求めた。東京地裁は、このような行為は独占禁止法が禁じている優越的地位の濫用に該当するとして、飲食チェーンの損害賠償請求を認めたというもので...

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執行役と執行役員はどう違うのか

会社法には「社長」や「副社長」といった、経営者に該当するとされる肩書を定義した条文はない。ただ、会社が「社長」や「副社長」といった代表権限を有すると認められる名称を付した者が行った取引について、会社は善意の第三者に対して責任を負うという条文(表見代表取締役という。法354条)があるだけである。 そもそも、会社法上は「取締役、会計参与、監査役」のみが役員とされる(法329条)。ちなみに会計参与を置く株式会社はあまり一般的とは言えないので以下では触れない。 ...

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四半期「報告書」の廃止の意味-サステナブルな経営に向けて

金融審議会のディスクロージャーワーキンググループ(WG)では、企業情報の開示についての議論が進められてきた。報告書案1では、四半期開示につき、四半期報告書を廃止し、四半期の決算短信に一本化することを提言する予定である。テーマとなった四半期開示は、もともとは経営のショートターミズム(短期業績志向主義、近視眼的経営)を助長し、長期の視点からの経営の阻害になるとの懸念から議論が始まった。すなわち、四半期ごとに開示される短期的な業績を上げることに経営者が注力し、長期的な設備...